伝統食の崩壊がいかに危険であるか?山梨県の桐原の話はそれを教えてくれているわけですが、それはわが国に限ったことではありません。

50年も前に、伝統的食生活崩壊の危険性を広範囲な調査により警告した人がいま。それはアメリカの歯科医ウェストン・A・プライス博士で、その調査の詳細はある本でその内容が紹介されています。

プライス博士は北アメリカ、スイス、ポリ、チンア、アマゾンなど、世界各地14の未開地を訪れ、昔ながらの食生活をする人たちと、近代的な食生活をとり入れた人たちの虫歯の雁息率の調査をしています。

プライス博士は歯科医であるということ、そして歯は容易に数字でとらえやすいということもあり虫歯や口腔を中心に調査したわけです。その他に「肉体の面でも、精神の面でも、また道徳の面でも退化の過程を防止するうえで、未開種族のほうが近代化された集団よりも優秀なのは、なぜだろうか。

その答えは、未開種族が大自然の法則に従った生活をしていることだけに、もとめることができる」と述べているように、虫歯が増えるということは歯の問題にとどまらず、全身の問題だと考えているわけです。その調査結果をいくつか紹介しましょう。

スイスにおける調査からは、孤立した集団は自然食を食べ、虫歯に対しては完全な免疫性を維持している。ただ、伝統的な食事法に変わって近代的な食事が摂られるようになると、サンモリッツのように高い山々に囲まれた理想的な場所やスイスの美しく肥沃な平野においても、虫歯に対する免疫性がなくなってしまうことが明らかになると思われる。

北アメリカは、近代的な市販食品を食べるといった近代化した地域では、原住民の健康問題はたいへん深刻なものとなっている。近代生活を送る原住民の子どもたちは、未開人がめったにかからない結核で死んでいる。

トンガにはあまり商船や交易船がやって来ないこともあって、輸入食品の入荷が少なく結果的に原住民はおもにその土地で採れる食物で生活せざるをえなかった。しかし、第一次大戦後、コプラと交換するため精白小麦粉と砂糖を積んだ商船がやって来るようになった。それらが入ってきたことの影響は歯の状態を見れば一目瞭然である。

オーストラリアの原住民は現在、地上で最古の人種であると考えられているが、彼らが自分たちの生来の食物を近代的な白人文明の食物に変えるにつれ、ひじょうに急速に滅びつつあるのである。
というのは、オーストラリアの大部分では生き残った少数者も保護地区に押し込まれ、そこでは土着の食物はわずかしか、あるいはまったく手に入れることができず、白人文明が彼らに供給する食品によって生きることを余儀なくされているからである。じつに彼らは、悲劇的な形で白人の食事が適切でないことを示しているのである。

高地やアンデスの東部、それにアマゾン流域に住むペルーの原住民たちは、虫歯に対する高い免疫性と、そして、何世代も積み重ねられた知恵にもとづいて、その土地の食物をとっでいるのである。ところが、彼らが、近代文明の食品をロにしだし、それが、旧来の食事にとって代わるようになると、必ず虫歯が広まり、そのような近代食品を採用したあとで育ってくる次の世代の人間には、顔や歯弓列に変形が起こってくることが発見されるのである。土地の食事にとって砂糖、甘味食品、精白米などの白人の食品であった。

まさに、山梨県の桐原は日本の縮図であることがわかります。プライス博士の指摘するように、日本も虫歯だけではなく、肉体面、精神面、そして、道徳の面や顔の形でさえ変化( 退化) しつつあるといえるのではないでしょうか。