私たち日本人は「あまりにも欧米色の強い色メガネ」をかけてしまっているように思います。戦後、貧しさから脱却するために食の欧米化をすすめて、ふたをあけてみると生活習慣病の原因は「食の欧米化」だと言っています。

群馬県のある町が主催した町民対象の「健康講座」の中で、「健康と食生活」というテーマでの講演がありました。その町で大変におもしろいと思ったのは、毎年行なわれるという健康優良児のコンクールのことです。

優良児には賞が渡されるわけですが、その基準を聞いてみると、「身長と体重の大きい子ども」だといいます。そのため、この町では妊婦に牛乳の無料配布をしているといいます。これは多くの町で行なわれてきたことですが、健康優良児の「身長と体重の大きい子ども」という基準を冷静に考えてみると、ユニークなものを感じます。

多くの栄養学者のいうところの「戦後の栄養改善によって、子どもの体位が立派になった」という言葉と通じるものがあるからです。身長と体重の大きい子どもを表彰する背景にあるものは、「欧米人に負けない体位」ということではないでしょうか。

私が中学生のころ、「頭のよい子どもですね」とほめられた子どもは、欧米文化をとり入れるために必要な英語と科学技術文明の基礎となる数学、あるいは理科の成績のよい子どもでした。体育や社会、国語などの成績がいくらよくても優秀だといわれることはありませんでした。

思春期になり、異性に興味をもつころ、美人コンテストなどや雑誌の表紙を飾る女性を見ると、欧米人のように脚の長い、目鼻だちのはっきりした女性でした。間違っても、将来子どもをたくさん産めそうな安産型の大地に根を張ったような人が、コンテストで優勝したのを見たことがありません。

医学においては西洋医学のみが信頼できる正統な医学であり、東洋医学はおくれている、非科学的なものとさえみなされてきたように思うのです。このような例はまだまだたくさんあると思います。私たちは「文明開化」という言葉が盛んに使われた明治時代から約百数十年、「欧米に追いつき、追いこせ」、そして「欧米的なものには価値があり、日本的なものには価値がない」という色のついたメガネを、知らず知らずのうちにかけてしまっているのではないでしょうか。戦

後のわが国について、哲学者の梅原猛氏は「戦後のわれわれは、いかに近代化、ヨーロッパを理想として推進したことか。近代化、ヨーロッパ化が、戦後のわれわれの理想であった。

政治家や思想家だけでなく、栄養学者といわれる人たち、そしてその教育を受けた栄養士の人たちは、ヨーロッパ的な食生活を「進歩的」とし、それこそが健康をつくる、という教育をしてきたわけです。まさに、単純な論理をもって「伝統食の否定」をしてきたのが戦後の栄養教育だったのです。残念ながらそれは今でもあまり変わっていないのではないでしょうか。何かといえば「牛乳を飲みなさい」してもよいのではないでしょうか。